不動産購入を検討する際の資金調達方法として、多くの人が住宅ローンを選択します。 その中でも住宅ローンの融資承認が非常に難しい物件があります。 それは、建蔽率オーバー物件と容積率オーバー物件です。 物件自体は傾いているわけでもなく資産価値が高そうに見える物件であっても、建蔽率や容積率がオーバーした場合には融資できませんと言われることが多いです。 このような物件を検討する場合、原則は現金で購入するしか方法がありません。 何故ここまで厳しい評価をされるのでしょうか。 この記事では建蔽率オーバーと容積率オーバー物件の住宅ローン事情、どうやったら融資を組むことができるかについて解説します。
目次
建ぺい率・容積率とは

建ぺい率・容積率とは、ざっくり言えば、地域ごとに適切な大きさの建物を建ててもらうための、都市計画上の制限になります。 建蔽率とは、建築面積(土地に接する面積)と土地面積の割合になります。 50坪の土地に30坪の建物面積を建築した場合、建蔽率は60%となります。 容積率とは、延べ床面積(各床面積の合計)と土地面積の割合に100を掛けた割合になります。 50坪の土地に延べ床面積60坪の建物を建てた場合、容積率は120%となります。 建ぺい率・容積率について詳しく知りたい方は、下記サイトの記事が非常にわかりやすくまとめられているので、読んでみてください。
住まいのお役立ち記事


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建ぺい率オーバー・容積率オーバーはなぜ起きるのか
建ぺい率オーバーや容積率オーバーした物件とは文字通り、市町村で定められている数値をオーバーして建築されている建造物ということになります。 なぜこのような建築物があるのでしょうか。 この章では建ぺい率オーバーと容積率オーバーの物件が起きる理由について解説します。
建築基準法改正による既存不適格

1971年に法律改正が実施され、建物に関する制限が強化されました。 その際に建築基準法改正により変更されたのが、建ぺい率と容積率です。 つまり、それよりも以前に建築された建造物については合法物件から違法物件となったことになります。 また、市町村の都市開発事業によって、一部建蔽率と容積率の制限が強化されることもあります。 その場合も同様に合法物件から違法物件になってしまったことになります。 これらの物件は既存不適格物件と呼ばれ、違法物件とは少し違う扱いになります。
無許可増築による、違反建築物

無許可建築については、違法物件という扱いになります。 許可を取得していない違法物件と聞くと、山奥に勝手に建てたようなイメージがあるかもしれません。 普通の町で建築するには関係のない話と思われるかもしれませんが、実はかなりの数が違法物件として建っています。 特に注意しないといけないのが、増築や改築です。 家を建てる場合には建築課から建築確認証という許可証を取得する必要があります。 合法建築物として認められている建物について作成される書類になりますが、建築確認証の取得後にガレージや部屋を造作し建蔽率や容積率がオーバーすることがあります。 リフォームやリノベーションは許可なくできるイメージがありますが、内容によっては、建築物が違反建築物になってしまうこともあります。 大がかりな工事をする場合にはリフォーム担当者に確認し、建物全体が違法建築にならないかを確認しましょう。
土地を切り売りしたことによる違反建築物

大きな屋敷を所有している地主が土地の一部を売却した場合に起きるケースです。 広い庭の一部分を隣地住民が欲しがっていたので売却した、という話はよく聞きます。 それ自体は問題ないのですが、トラブルは屋敷自体を売却する場合に起きることがあります。 土地が広い分、屋敷も大きくなることが多いです。そのため、庭の一部分を売却しただけで建蔽率と容積率がオーバーしてしまうことがあります。 売却をする不動産会社も気づかないことが多く、注意が必要です。
一般住宅との銀行ローン融資の違い

融資額は土地の課税標準額や建物の資産価値をベースに算出し決定されます。 融資するためには抵当権を設定しますが、銀行にとって資産価値のある物件と判断した住宅に融資が決定されていきます。 一般住宅の場合は問題なく抵当権を設定する価値があり、融資が承認されます。 それに対し建蔽率オーバーや容積率がオーバーしている物件は、建物に価値が認められないため融資できないか大幅に減額した融資額となります。 そのため、購入予定の物件がこのようなオーバー物件だった場合かなりの自己資金額が必要となってきます。
では、建蔽率や容積率がオーバーしている物件は銀行融資を受けられないのでしょうか。 実は時代の流れと共に銀行の解釈についても変化があります。 融資を否決(もしくは検討もしない)してきた銀行の態度が少し変わり、融資を承認する銀行も出てくるようになりました。 また、融資承認を現状ではだせないまでも「こうすれば融資できます」という提案をもらえるようになってきています。 次章では、オーバー物件で融資承認を得る方法を解説します。
建ぺい率オーバー・容積率オーバーでも住宅ローン融資を得る方法
建ぺい率オーバーや容積率オーバーの物件だからといって、融資利用を諦めるのは少し早いです。 ここでは融資承諾を得られる方法を解説します。
住宅ローンの承認条件が緩い銀行を探す

最もシンプルな方法です。
メガバンクや大手銀行はリスクを回避する傾向にあるため、まず融資は承認されません。
一方、地方銀行や銀行以外の機構であれば可能性があります。
たとえば既存不適格の物件については違法ではなく合法物件として捉え、通常の融資で承認を得られるケースもあります。
融資承認の可能性を少しでも上げるポイントは、最初から銀行担当者に正直ベースで相談することです。
隠してしまうと銀行側に不信感が生まれ、承認となっていた案件でも否決になってしまうこともあります。
「この家を買うための方法を相談したい」
銀行も融資したいと思っています。そのため、このように相談すると親身になってくれる銀行もあります。
建物を壊して違法性を解消する

既存不適格と違法物件のどちらであっても、現行法令に適合した物件になるように現状を変えることで融資は格段に承認されやすくなります。 造作された部屋を壊すのは難しいですが、ガレージであれば可能性はあります。 ガレージが部屋として見られる理由は、壁と屋根があるからです。 逆に、壁と屋根がないカーポートは建蔽率や容積率の計算には含まれないケースが多いです。 難しい場合も多いですが、改善し融資が通る可能性があるなら検証してみましょう。
隣地の土地を買うなどして違法性を解消する
隣地に相談し土地を買い足すという方法もあります。 土地が大きくなれば、建てていい建物の大きさも必然的に大きくなるので、違法性を解消できます。 どれくらいの土地を取得すれば違法性が解消できるのか、不動産屋にきちんと確認しましょう。 ちなみに、お金を払って融資承認を得るのはとても無駄な行為に思われるかもしれませんが、実は、土地はほんの少しでも増えるだけで資産価値が大幅に増えることがあります。 通常、一軒家を建てるには、30坪の土地面積があることが好ましいです。 もしあなたが所有している土地が80坪の場合、2棟しか建てられない上、余った土地が発生するため、売却する際に思ったよりも値段が伸びないです。
もし10坪分買い増しして90坪になれば、3棟建てられる土地になります。 土地も余すことなく有効活用することができるので、売却価格も伸ばすことができるのです。
例えば、土地の価値を坪50万、建物価値を1棟1,000万とすると 80坪2棟の場合、土地の価値は40坪×50万=2,000万+1,000万=3,000万×2=6,000万となります。

90坪3棟の場合、30坪×50万=1,500万+1,000万=2,500万×3=7,500万となります。

10坪購入するための費用は10坪×50万=500万のため、差し引き1,000万価値が増加することになります。
自己資金が豊富にある場合は対策をしなくても融資可能性有り
銀行の融資基準は原則「人+物件」です。
そのため、オーバー物件に価値がなくともその人の価値が非常に高いと見なされれば承認がおりることがあります。
一番分かりやすいのは、多額の自己資金を保有する場合です。
もしくは、多額の資産を保有している人が連帯保証人に入ることで承認されるケースもあります。
建ぺい率・容積率がオーバーしていても住宅ローン融資を諦めないで
この記事では建蔽率オーバーや容積率オーバーしている物件の住宅ローン事情を解説しました。 検討している物件が住宅ローンの難しい物件かどうかは、銀行に相談するまで分からない場合が多いです。 そのため、購入の検討を進めたタイミングで気づくことなり驚くことが多いです。 しかし、既存不適格については法令が変わったため所有者に責任はなく、違法物件においても故意ではない場合も多いです。 それらを汲み取り、融資承認をする銀行も増えてきています。 不動産購入全般に言えることですが、まずは物件の状況やオーバーに至った背景を確認し融資承認を得るための方法をプロを交えて検証していきましょう。
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