建築されて時間が経過している投資用不動産は、融資が受けられないと聞いたことはありませんか? 実は、融資を受けられないわけではありません。 融資を受ける条件が厳しくなるだけで、融資を受けられることがあります。 ここでは、建築年数が経過している不動産の融資を受けることができる条件や、建築年数が経過しているからこそ不動産投資をしてみる価値があるという理由を解説します。
目次
不動産投資における耐用年数と融資の基礎知識

そもそも耐用年数とはなんぞや、という方もいるかと思います。
ここでいう耐用年数とは、税法で定められる法定耐用年数のことを指します。
実際に建物が耐えられる年数という事ではなく、ざっくり言ってしまえば税金を計算するための年数なのです。
融資の審査では、この法定耐用年数を審査の基準にします。
法定耐用年数は構造により以下のように定められています。
法定耐用年数
- 木造:22年
- 鉄骨造:骨格材の厚み3㎜以下→19年・3㎜超え4㎜以下→27年・4㎜超え→34年
- RC造:47年
不動産投資用の融資は最長30年と設定されているケースが多いため、法定耐用年数がまだ30年以上ある場合でも融資返済は30年に短縮される可能性があります。 金融機関は法定耐用年数の残存年数により、返済期間を決めてきます。 そのため、建築経過年数が法定耐用年数を超えている不動産は、融資の審査対象外となるわけです。 これが耐用年数オーバーした不動産は融資が受けられないと言われる所以です。 ただ、耐用年数オーバーであれば不動産投資で購入できないかというと、そうではありません。 次章では耐用年数オーバー物件でも融資を受けられる物件についてみていきたいと思います。
不動産投資において耐用年数オーバーでも融資を受けられる物件とは
耐用年数オーバーの物件は、基本的に建物としての価値はゼロです。 税法上の建物の価値がない場合、金融機関は建物の価値分を他でカバーできないかと考えます。 例え建物に価値が無いとしても、金融機関が融資をしたいと思える条件があれば、融資をしてくれます。 融資を受けるのに有利な条件の主な方法は以下のとおりです。
融資を受けるのに有利な条件
- 建物の価値を補完できるような、価値の高い土地である
- 収支計画が綿密に計算されている等、きちんとした収益が見込める事を証明できる物件
- 法定耐用年数を超えていても、耐震診断で実際の建物耐用年数がまだある事を証明できる
- リフォームすることで建物価値を上げる
耐用年数をオーバーしている投資用不動産の融資を受けるコツとして、土地や事業性で建物の担保価値を補うことです。 土地が主要駅から近い立地、近隣に大規模工場などがあり空き家になりづらい立地、建物がなくなっても処分がしやすいというような土地だと、価値が高いと判断されるかもしれません。 また、建物の価値を上げることも、融資を受けやすくする方法の1つです。 耐震診断をおこない耐震性があることを証明する、外壁塗装や防水工事をおこなうなど建物を維持することにより、融資が受けやすくなることがあります。
耐用年数オーバーの不動産に投資するときの注意点

耐用年数オーバーの不動産に投資する場合はまず、融資の返済期間に注意してください。
金融機関から融資の承諾が来ても、法定耐用年数を理由に、返済期間を短く設定されるケースがあります。
返済期間が短くなると、月々の返済金額が大きくなるので返済が滞りやすくなります。
また、耐用年数オーバーの物件は、物件価格に建物金額がほとんど乗っていない為、不動産投資において重要な要素である、減価償却がほとんど使えません。
建物価値が残っていたとしても、耐用年数オーバーの物件は減価償却期間がかなり短く設定されます。
減価償却が使えないということは、最初からデッドクロスが起こってしまうような状態になってしまいます。
デッドクロスとはざっくりいえば、元本返済による支払額が、経費として計上できる金額を上回った状況を指します。
詳しく知りたい方は、下記サイトの記事がポイントを簡潔にまとめていてわかりやすいので、読んでみてください。
ウェルスハック


不動産投資のデッドクロスとは?中古物件で節税したい人向けの対処法
不動産投資におけるデッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態のことです。デッドクロスが起こると資金繰りが悪化し、黒字倒産に陥るリスクがあります…
投資初年度から減価償却による節税ができないなんてこともあるので、気をつけましょう。
不動産投資における耐用年数オーバー物件のメリット

耐用年数オーバーの不動産は投資をおこなうメリットもあります。 メリットとして主に考えられるのは以下のとおりです。
耐用年数オーバー物件のメリット
- 耐用年数オーバーの物件は他の物件と比べ割安になるので、高利回りを期待できる
- 建築年数が経過していると、住人の立ち退きを考えた出口戦略を立てられる
- 土地価格並みで融資を受けられれば、相続税対策になる
高利回り
何といっても耐用年数オーバーの不動産の魅力は、高い利回り商品があるということではないでしょうか? 新築物件であれば、建物の価値分もべったり物件価格に乗っています。 それが耐用年数オーバーの物件であれば、建物金額が乗っていないほぼ土地のみの代金で、収益を生み出せるツール(建物)が手に入ります。建物の状態にもよりますが、新築、築浅に比べてかなりの高利回りを期待できるのは、やはり魅力的です。
土地売却としての出口戦略を立てることができる
しばらくは家賃収入を得て保持したあとに、住人に立ち退いてもらい、購入金額よりも高い金額で土地を売却します。 立ち退き料は譲渡するときに、所得税の売却経費として計上できますので、譲渡するとき有利に働きます。 ただし、立ち退きは専門性が高い分野のため、事業計画を始めるときには弁護士などに相談をするようにしましょう。
相続税対策の一つとして活用できる
耐用年数オーバーの不動産投資のもうひとつのメリットは、相続税対策に利用できることです。 賃貸用不動産を所有していると、相続時に敷地に対して借地権割合といわれるものを利用することができます。 借地権割合というのは、相続時に土地の評価額を一定の割合、減額することができるというものです。 仮にアパートの敷地が更地の評価で1億円、借地権割合30%の土地を所有していたとします。 相続時にアパートが満室の場合、その土地の評価額は借地権割合の30%減額されるため7000万円となり、相続税の節税となります。 耐用年数オーバーの建物ですので、建物の評価は低く相続時には大きな影響はありません。 また、年金代わりに収入を得ることができるというメリットもあります。
耐用年数オーバー物件でも上手く活用できれば良い不動産投資になる
耐用年数オーバーの不動産に対して融資を受けることはできます。 しかし、耐用年数オーバーの不動産のメリットとデメリットはそれぞれ大きいため、自身がどのような目的で購入するのかを基準に耐用年数オーバーの不動産への投資の検討をしましょう。 高利回りの投資なのか、相続税対策の投資なのか、この違いにより検討する不動産の内容は変わります。 事業計画を立てるときから金融機関、不動産会社、法律家に相談しながら、耐用年数オーバーの不動産への投資を検討してください。
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